序論

序論


西暦708年に和同開珎が作られるまで、人は貝などの手に入りにくいものを媒介として決済を行ってきた。その世界に貨幣が入ってきたときの衝撃は想像するに難くない。それは、流通がある一地域だけでなく、だんだん広い地域に広がってきて誰でも認める価値ある媒介としてのお金が必要になったことに由来する。

現在、21世紀を目前にして、流通は世界中に広がり、情報化の進展により世界中の家庭がいつでもつながるという数十年前には夢物語だったことが実現しつつある。流通が変わり、そこに商品が乗るようになると、その決済方法が変わっていくのは自然の成り行きである。

貨幣という決済方法は1300年、信用決済で100年あまり続いてきた。現金決済、口座決済、信用決済、これまではそれぞれの良い点を生かしながら共存してきた。今そこに全く新しいコンセプトの決済方法が加わろうとしている。この方法が加わることで金融業界のみならず、すべての業界、すべての社会に大きな衝撃をもたらすであろうことは疑う余地がない。では、それはこれまでの方法を否定し、すべてに取って代わる性格のものなのだろうか。それともやはり決済の一手段としてこれまでの方法と共存していくのだろうか。もしくはこれまでにある一方法の分野に代替するのだろうか。

私は、これまでの決済方法のそれぞれについて内容・課題・問題点を考察し、その上で電子金融の実現可能性を探り、そして前述したような疑問に答えていきたいと考えている。


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