1.虐待母への怒り


パワハラ女経営者への復讐制裁をきっかけに、意気投合した僕とA子は、その後も法で裁けぬこの世の悪人に監視の目を光らせるようになった。
夜のプールは情報交換の場だ。そしてあの一件以来、すっかり「男子用競泳パンツ」の着用が病みつきになったA子は、今日も人の目がなくなると競泳パンツ姿で水泳を楽しんでいた。そして僕も、不思議とその「トップレス&ハイレグ」姿に、 安心感を覚えるようになっていた。
その日は、自分の子どもを常習的に虐待している母親の情報が飛び込んできた。
特に悪い事をした訳でもないのに(いや、仮りに悪さをしたとしても、もはや躾ではない)、その女は気に食わない事があると、子どもをこの寒空に屋外に締め出して凍死寸前にまでさせているというのだ。もちろん児童相談所には何度も通報されているが、 その都度子どもを部屋に入れて何事もなかったかのように装い、訪れた係員や近所に人に対して「濡れ衣を着せるような真似したら、訴えてやる!」と逆に恫喝して、最近では通報すらされないらしい。
このままでは子どもの命が危ない。
僕とA子は早速その女の家に急行した。すると案の定、家の外で小さな男の子が寒さに震え、意識を失いかけていた。
「もう大丈夫だよ」
僕とA子は子どもを救出して、暖かい場所に保護した。この後の保護は公共機関にまかせるとして、僕らの仕事は許しがたい母親への制裁だ。
僕らはユニホームである競泳パンツ姿になって、女の家に踏み込んだ。


(つづく)



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