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僕はその日、水泳のために通っているスポーツジムで、かつて勤めていた会社の同僚だったA子と、偶然再会した。
話を聞くとA子も最近、あの会社を辞めたそうだ。
僕はあの会社での仕事は好きだったし充実していた。ところが創始者一族の社長が代替わりして、お世辞にも「切れ者」とは言えない御曹司(ドラ息子)が社長となってから、全てが暗転した。
まあ、新社長自身は社長室でボッとしてるだけなのでまだ良かったのだが、その妹であるC子がとんだ食わせ者だった。役員となったC子は精力的(?)に各部署をまわり、人事権に介入して「自分が気にいるかどうか」という
判断基準で社員へのいじめ、パワハラ、粛清に励むようになった。そして僕も目をつけられ、些細な口答えがきっかけで退職を余儀なくされてしまった。
A子の話では僕が辞めた後もC子と御曹司の悪行はエスカレートする一方で、意識の高い社員から率先して会社を去ったために、会社の業績も徐々に悪化していった。A子は直接いやがらせを受けた訳ではなかったが、
そんな会社が嫌になって自ら辞表を出したのだそうだ。そして今は、転職先を探しつつ、自分を磨くために水泳を始めたのだそうだ。
僕もA子も、あの会社での仕事が好きだっただけに、辞めざるを得なかった事がとても悔しいという気持ちで意気投合した。あのC子さえいなければ・・・
(つづく)
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